日本酒ブームといわれて久しい昨今ですが、大手酒造メーカーに隠れてまだ日の目を見ない銘酒は少なくありません。そんな酒蔵にスポットを当てたい!!日本酒好きが高じて、地元奈良の酒蔵に就活経験を持つ南方(みなかた)が老舗の酒蔵さんをご紹介します。

 

img_7299大石酒造 八代目当主 大石 博司社長
京都亀岡において創業300年の歴史を誇る大石酒造、八代目当主兼社長。昔ながらの生酛造りを伝承する数少ない酒蔵。若くして経営に参画し、今も尚、日本酒の可能性を拡げる。その一方で早くから海外進出を成し遂げる経営手腕の持ち主でもある。

 

img_7299ライター 南方 由紀
1995年3月28日生。奈良県出身。メニューデザイン研究所大阪本社勤務。猫と日本酒をこよなく愛する新米プランナー兼ライターです。

 

 

中国で工場を設立した日本初の酒蔵

インタビュー風景

創業から300年という歴史もさることながら、世界進出を早くに成された大石社長。江戸時代に確立した生酛造りを受け継ぐ一方で、その技術をいち早く中国に持ち込んだ経営手腕も光ります。

 

南方
中国進出されたのが20年前と聞きますが、海外への進出と中国を選ばれた理由をお聞かせください。

 

大石社長
若い頃にJICA(青年海外協力隊)の第一期生としてエジプトに渡航したりと、早くから世界への関心は強くありました。日本酒というドメスティックな商品でも、世界には新しいマーケットがあるとも感じていたのです。知人である商社マンのつてもあり、元々ワイナリー工場があった中国の天津で日本酒工場を新設したのがきっかけです。
中国工場

新工場建設時の大石社長

大石社長
しかし酒造りの環境としては劣悪を極めていました。とにかく寒すぎるのです...。ひどい時には-15℃を下回ります。日本ではせいぜい-5℃のためその差は歴然です。こうも寒すぎると発酵が止まるためお酒ができないのです。ですが今も尚、中国で酒造りができているのには熱心な現地の若手杜氏家がいたからです。 寝袋でくるまりながら夜の仕込に没頭する彼らの姿を幾度となく見てきました。彼らが日本に来たときも、耳に穴があく程に聞き込みを続けます。向上心の塊の様な彼らは日本人を上回る程でした。上海へと工場を移設した今は、その時の彼らが主力となり酒造りを続けています。上海だけみても和食店は一万店舗と言われています。マーケットが確立されつつあるこの地で、品質はまだまだ日本に劣りますが今後も成長を続けていきたいです。

 

みなぎるアイデアの源は?

アイデアについて考える大石社長

 

 

 

 

南方
先程の海外進出や数多の商品をリリースされている大石社長ですが、アイデアの源はどこにあるのでしょうか?

 

大石社長
うーん、、それは自分が一貫して現場主義な人間だからだと思います。今日来ていただいた場所は見学所です。今年で30周年を迎えますが、このような施設を始めたのは同業の中でも早い方だと思います。今日も観光バスがここにやってくるけど、法被に着替えて陣頭指揮を振るっているからね笑

 

お客さんとの近さがアイデアを生む

見学所に設けられた物販コーナー

大石社長
『美人薄命』という言葉がありますが、人も酒も同じで良いものは短命なものです。ですからできたての良い酒を良い状態で飲んで欲しいと常々考えています。その点、見学所はお客さんの反応を直接感じることができます。 酒販店を介さず販売するのもそのひとつです。見学所にきてもらい試飲して美味しいと思ったものを購入してもらえるからです。酒販店を通せばその分鮮度が落ちてしまうから。やっぱり良いものは良い状態で飲んで欲しいという想いが、アイデアを生むのかもしれません。

 

地産池消の酒、てんごり

南方
おすすめのお酒を3つ教えてください!

 

大石社長
まずひとつ目に「てんごり」というお酒があります。
てんごり

生酛本醸造酒 てんごり

大石社長
南丹波市美山町で栽培された酒米「五百万石」を使用した地産池消のお酒です。漢字にすると「転互利」。雪深い美山に伝わる言葉で、「互いに転じて利を成す」という意味があります。酒蔵から目と鼻の先にある「かやぶきの里」が描かれたラベルと美山町長の直筆による書き文字も味わい深い一本です。

 

国際大会のIWCで銅賞受賞

IWC

大石社長
ロンドンで開催される国際的な大会、IWC(インターナショナルワインチャレンジ SAKE本醸造部門)にいて、銅賞を5度受賞している国際的にも高く評価されているのも「てんごり」です。

 

気になるそのお味とは?

南方さん試飲

南方
香りよりも深い味わいが特徴的な生酛本醸造。一年寝かせたことによるちょっと甘口な味わいも後を引きます。常温でもおいしく頂けますが、大石社長のおすすめは燗酒とのこと。料理と合わせるなら和食との相性がとても良いそうです。

>てんごり誘導

 

女性向けの吟醸酒、ヌーボー

ヌーボー

吟醸酒 ヌーボー

大石社長
季節限定の吟醸酒にヌーボーというお酒があります。冷やしてキリッとした飲み口を味わうのがおすすめです。最近では女性を中心に人気を集めています。合せるなら肉料理がいいでしょう。ちょっと辛口な吟醸酒の良さが料理の味を引き立ててくれます。

 

南方さん試飲2

南方
スーッと喉を通る爽快感と透き通るようなお米本来の味わいも同時に感じることができます。こってりとしたお肉料理には抜群に合うと思います。

 

 

米の優しさを感じる、生酛純米酒 翁鶴

翁鶴

生酛純米酒 翁鶴

大石社長
江戸時代に確立された技術で「米」、「米こうじ」、「水」のみを原材料として作られる昔ながらのお酒です。米を贅沢に使う酒で「酒一升」つくるのに「米一升」必要とされ、そのため健康にも一番よい酒とされています。味は濃く、喉ごしの残る特徴あるお酒です。和食のお料理に良く合う一品です。ぬる燗が一番。

 

南方さん試飲3

ただただ笑顔になれるお酒です。おいしー!

 

好きな一本を見つける一日

お酒の工程表

300年前に誕生した酒造りの工程表

南方
見学所では300年前から続く酒造りの工程を知ることができます。実際に使われていた器具も展示されているので当時の情景を思い浮かべながら見学することができます。

 

水樽

江戸時代に実際に使用されていた水樽(みずたる)

 

工場の展示物

精米歩合ごとに分かれた地元美山産の酒米

 

物販でお気に入りの一本を購入できます

見学所と併設されている物販コーナーではお気に入りの一本を購入できます

南方
見て聞いて知ることでお気に入りの一本を購入することができます。もちろん試飲で自分好みのお酒を選べるのも嬉しいですね。吟醸酒のヌーボーを購入しました!

 

大石社長にとって、良いお酒とは?

大石社長

大石社長
最後は ”ホンマモン” であるか、これに尽きると思います。原料を包み隠さずにいられるか。インチキはすぐにバレる商売だと思いますから。自分を見たら分かるでしょ?地のままにいかなあきまへん笑 そうじゃないと人もすぐにバレてしまうから。あと、良いお酒はできるだけ化粧をしないスッピンでいれるかだと思います。この時代、難しくなってきていますができる限りありのままでいたい。酒も人もです。

 

見学を終えて

米・水・気候が毎年違えば、去年と今年の味も異なります。それが日本酒です。それだけ繊細なものを長年に渡り造り続けていることに重みを感じました。訪れた日(3月9日)が最後の仕込みの日であったそうで、杜氏のみなさんと労いの会を開くとのことでした。これからは商品化に向けての製造が待っています。丹精込めて造られたホンマモンの味をみなさんも是非味わってみてはいかがでしょうか?

 

 

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